麦麦の場所
●開田村は御岳山(3074m)のふもと標高1100〜1200mの高地で、 人口2000人に満たない小さな村です。 91年春に始めてここを訪れた私たちは、その空の広さと山々の美しさに感激して その場で「引越し」を決意。 幸運にも、古い家を貸してもらう事も決まりました。 夏再び訪れ、今度は布団をきっちり被っていないと寒いくらいの朝・涼風にまたまた感激! (パン屋の夏はパン釜の熱ですごーく暑い。) ただただ、引越しの日を待ち望みました。 ●そうして、9月半ばついにここ、開田高原での暮らしが始まりました。 思えば開田のベストシーズンしか知らないままの”無謀”な転居でした。 |
「開田は寒い寒いってみんないうけどどのくらい?」と聞くや 待ってましたとばかりにニタっと笑って「なあに20℃くらいよ。20℃」 「それってマイナス20℃??」 「大丈夫、大丈夫。みんな住んでんだぁ。ははははは」 ドキリ!! ただもうおどろいて・・・いつになく無口になってしまった私たちでありました。 果たしてここでパンは焼けるのか?どんな冬が待っているのか? |
重大なことも知らず、あっさり 引っ越してきた私たちはしばらくの間、 村の人たちのことばに、はらはら。 曰くー夜中吐く息で、しめった掛け布団がバシバシに凍るぞお! 曰くー風呂場のシャンプーがかき氷みたいに、なるぞお! 曰くー朝、濡れた手で鍋をさわったら、指がくっつくぞお! ●そのつど、えっ!うそー!と驚く私たちの顔をみては、楽しそうに、満足そ うににっこり笑って、そのあとは例のひとこと。 「大丈夫、大丈夫!こうして、わたしらだって、暮らしてんだからさあ。 それに、春はいいよう。最高だよう。」 ●そうこうしている内に、寒い朝がやってきて。我が家にも、まきストーブが すわり(ここでは、こういう表現をします。なんとも、ええ 言い方ですよね。)煙突からあがる白い煙、山々の色は日々刻々と変わり、 そのバックはどこまでもひろーい青空。 そうして、なにより気がかりだったパンも、無事焼けることがわかり!! (考えてみれば、そもそもパン焼きは、寒いところで始まっているのですものね) めでたし、めでたし。麦麦IN開田村のスタートとなったのであります。 |