木曽五木(きそごぼく)
 木曽の山々は、古くから優秀な木材を産出することで知られていましたが、江戸時代の初期に城下町の建設などで濫伐が進み、荒廃してしまいました。このため、当時木曽の山を管理していた尾張藩により「木一本、首一つ」といわれる厳しい保護政策がとられました。その際伐採が禁止され、保護された5種類の樹木がいわゆる「木曽五木」でした。今でも木曽の山々はこの木曽五木が主体となって美林を形成しています。
木曽ひのき
・木曽ひのき【ヒノキ科ヒノキ属】

 ヒノキといえば木曽といわれるほど、五木の中で重要な樹種です。木目が通り緻密で、清楚な色合いと香気・光沢に富んで、加工後の外観も非常に美しいのが最大の特徴です。伊勢神宮をはじめ、壮大かつ高雅な高級建築用材として知られています。材質は堅牢で狂いが少なく不朽にも耐え、しかも工作がしやすいなど多くの特性を持つため木材の王と呼ばれています。
サワラ
・サワラ【ヒノキ科ヒノキ属】

 天然の分布はヒノキと一致して海抜1,000m前後にあり、ヒノキは中腹以上にサワラは、中腹以下の谷間に多く成育しています。成長は旺盛ですが、老齢には空洞木が多く見られます。木目がきれいで色合いもヒノキに似て美しく耐湿性に富み酸類に強いため桶材として最も優れています。また、軽量さはキリ材に次いでおり、さまざまな用途に利用されています。
ネズコ
・ネズコ【ヒノキ科ネズコ属】

 五木のうち最も寒冷の気候に耐え、2,000m以上の所にも天然の分布が見られます。一般には湿地や陰地に好んで成育します。材質は木目が細かく通り芳香を放ち、色合いは黒褐色で渋味があり、耐湿性が強いこと、材が軽いことがサワラに似ています。木曽の特産のネズコ下駄、木目を活かした机、茶だんすなどの家具、天井板、建具材に用いられています。
ヒバ
・ヒバ(あすなろ)【ヒノキ科アスナロ属】

 あすはヒノキになろう。という話から『あすなろ』という名前がついたと言われていますが、一名はヒバとして知られています。成長が遅い上にヒノキやサワラと比べると材価も安く、色合いや香気の点で劣りますが、狂いが少ないこと、負担力が強いこと、保存性が高いこと、材質が緻密である点など数々の特性があるため、建築材、建具材、漆器曲物の木地、彫刻用材として多く用いられています。
コウヤマキ
コウヤマキ【マツ科コウヤマキ属】

 ヒノキより一層乾燥している場所に成育し、峰筋の土の浅い岩石地にも多く見られます。木はとても大きくなりますが、成長が遅い上に用途が少ないので、造林はあまり多くありません。木目が通り材色は黄白色、ヒノキ以上の光沢があり永く水湿に耐えることは五木のうちで最高で、独特の長所とされています。高級な風呂桶、水桶などには欠かせない用材です。流し場、船、橋などに最適材として重宝されています。
(背景は上松町の「赤沢自然休養林」の樹齢三百年の木曽ひのきの森)


←MENUへ