人生最大のピンチ!  …… 死にかけた話。

 人間、生きていると、色々なピンチに遭遇します。自分もその例にもれず、人生最大のピンチ「死にかけたこと」があります。
 パラグライダーって知ってますか?長方形のパラシュート型をした骨組みのないグライダーです。もう10年も前になってしまいますが、日本にパラグライダーが入り始めたころ、幼いころから空を飛ぶのに憧れていたうえ、新しモノ好きの自分は、早速、スクールに入り、B級ライセンスを取ると、自分の機体を購入し、あちこちのスキー場などで暇さえあれば飛んでいました。仕事が終わって日没までのわずかの時間に、1回だけでも飛びたくて出かけることもありました。
パラグライダーそんなある土曜日の午後、隣町のスキー場へ飛びに出かけましたが、あいにくの強風。諦めきれずにスタンバイしていると、風が一瞬止みました。「この1回だけ飛んで帰ろう」と思ってテイクオフ。しかし、その1回が命取り。上空は乱気流が渦巻いており、激しく機体が変形します。こりゃ危ないと思って、着地しようと高度を下げたところへ更に突然の横風。グライダーは翼から空気が抜け、一瞬のうちにきれいにしぼんで、あとは地面に向かって自由落下。約20メートルの高さから落下する、ほんの2秒足らずの間に、色々な思いが走馬灯のように頭をかすめました。一瞬の後、全身を貫く衝撃が…。
 朦朧とする意識を現実に引き戻すような全身を走る激痛。足から着地したので、いくぶんショックが柔らげられましたが、落ち方が悪ければ、全身打撲や内蔵破裂で即死だったでしょう。見物していた人が通報してくれた救急車で搬送され、地元の総合病院へ直行。診察の結果背骨を骨折しているのが判明。そのまま2ヵ月の入院生活となりました。
 入院中は、1ヵ月半の間ベッドに寝たままで一歩も起き上がれませんでした。骨折でどこかの神経が少しマヒしたのでしょう、最初の2週間は自力で排尿ができませんでしたので、カテーテルを入れていました。また、大きな方の用を足すのはベッドの上で大人用の紙おむつ…。これにはまいった!
 「動けない」という事が、いかに辛いかを思い知らされました。ベッドの下に落ちたもの一つ拾うことができない、寝返りすらできない、両手が届く範囲だけが今の自分の世界…。来る日も来る日も、ベッドの上でただじっとしている生活、天井だけを見上げている毎日…。
 それでも幸いなことに脊椎の神経はなんとか無事でした。1ヵ月半経過したところで、歩行許可が出ました。ところが、寝たきりだった体は、自力で立ち上がることさえできなくなってしまうほど衰えていました。ですから、最後の2週間は、立ち上がることから始めて、歩行できるようリハビリをしていました。何とか歩けるようになったところでよろよろと歩いて、退院してきました。
 当時は若干の左足のしびれは残っていましたが、今では足のしびれも完治して普通の生活をしています。ただ、時々は骨折した所が痛む時があります。
 それにしても、半身不随はおろか、もう少しで命を落していたかもしれないと思うと、今思いだしてもぞっとします。時々落ちる夢を見るし…。
 1回だけだから…。そんな甘い気持ちの行動が、結果として家族や職場にたいへんな迷惑を掛け、自分の体や精神にもダメージを受けてしまいました。
 しかし、この経験で、ちょっと大げさかもしれませんが、人生観が少し変わりました。
 普段、生活をしていると、「今日」が来たように、「明日」もごく普通の日常が来るものだということを疑わなくなってしまっているいます。しかし、明日どころか今この次の瞬間にも何かが起こり、今までの生活が一変してしまうかも(或いはそこで終わってしまうかも)しれない、大事な人がいなくなってしまうかも知れない、日常生活の根幹がなくなってしまうかもしれない、病気、事故、火事、災害、etc…など様々な事態で。ということをしみじみ感じました。
 生きているってことは、とっても不確定で危ういものなんですね…。
 退院して半年後、「一期一会」の心を学ぶため、茶道を始めました…。


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